このブログのポイント
- 絨毛検査は羊水検査よりも早期に実施可能な診断的検査である
- NIPT陽性後の診断方法として絨毛検査も選択肢となり得る場合がある
- 適切な診断方法を選択するためにも、胎児超音波検査で胎児をよくみることは重要である
妊婦さんの中には出生前検査としてNIPTを受けようかと迷っている方もいらっしゃるかと思います。
NIPTは13番、18番、21番の染色体が、それぞれトリソミー(本来2本ある染色体が、3本に増えている状態)の状態となっている可能性を評価する目的で行われる検査です。
多くの妊婦さんは検査を受けることで安心を得たいと考えていると思いますが、陽性と結果が出ることもあります。
その場合、診断的な検査について考える必要が出てくると思います。
診断的検査は、絨毛検査と羊水検査とがあります。
一般的には、絨毛検査は妊娠11週から、羊水検査は15週から可能とされています。
一方でNIPTは妊娠10週から検査が可能となっています。
NIPTを10週で受けた場合、結果は妊娠12週迄には開示されることが一般的かと思います。
そのため、もし検査結果が陽性となり、診断的な検査に進むことを考えたとき、絨毛検査をするのか、羊水検査をするのかを選択することになります。
絨毛検査のメリットは羊水検査と比較して早期から検査をすることができることです。
一方で絨毛検査は、将来胎盤になっていく部位の組織を生検するため、胎児の細胞を見ているわけではありません。
もちろん、胎盤も胎児も最初は受精卵という1つの細胞からできてきており、胎盤の染色体に変化があれば同じ変化が胎児もあるという前提で、診断的な検査となっています。
しかし、困ったことに、絨毛検査の結果で染色体変化のある細胞と変化のない細胞が混在している場合があります。
これを胎盤モザイクと言います。
胎盤モザイクが見られた場合は、その状態が胎盤だけにあって胎児の染色体核型は正常な胎盤限局性モザイクの場合と、同様のモザイクが胎児にもある場合があります。
胎児の予後をより正確に予測するためには、胎盤モザイクがみられた場合、胎児に染色体モザイクがあるかどうかは、重要な情報となります。
それを確認するためには羊水検査が必要となります。
一方で、羊水検査のメリットは、直接羊水中の細胞を評価することができることです。
これらのほとんどは胎児由来であるため、通常は、胎盤モザイクの影響を考えずに評価をすることができます。(胎盤を貫いて穿刺した場合など、特殊な場合は除きます。)
NIPT陽性だったとしても、胎盤限局性モザイクによって陽性の結果となることもありますので、そのような場合、羊水検査が診断的検査として適しています。
羊水検査のデメリットは実施できる週数が絨毛検査と比較して遅いということです。
妊娠15週から可能となっていますが、妊娠15週では羊水細胞の数が少ないことも指摘されています。
そのため、当院では、羊水検査を妊娠16週から実施しています。
妊娠12週でNIPT陽性となったとしても羊水検査を行うために数週間待つ必要があります。
陽性結果を受けた妊婦さんにとって、次の検査を待つ時間というのは精神的な負担がとても大きくなると考えられます。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
絨毛検査 | 妊娠11週から検査可能であり検査できる週数が早い | モザイクの結果だった場合は羊水検査が再度必要になる |
羊水検査 | 羊水細胞をみており、胎盤モザイクの影響を考慮する必要がない | 妊娠16週から検査可能であり、実施できる時期が絨毛検査と比べて遅い |
では、NIPT陽性となり、診断を希望される場合、診断的検査の選択はどのように考えれば良いでしょうか?
胎盤モザイクを考慮して診断的な検査は全て羊水検査とすれば良いのでしょうか?
胎盤モザイクが無ければ、絨毛検査の結果も診断的結果と考えられます。
それはNIPT陽性の場合でも同様です。
そのため、NIPT陽性と出た時にどちらの診断的検査を選択することが適切なのかを考えることはとても重要なことと考えています。
どちらの診断的検査を選択するかを考える前提として、以下の点を考慮しています。
- 胎盤限局性モザイク(胎児にはモザイクは無い状態)は13トリソミーや18トリソミーでは、21トリソミーと比較して頻度が大きいことが知られています。
- 妊娠初期であっても、13トリソミーや18トリソミーでは胎児超音波検査で赤ちゃんに構造学的な異常がわかることが比較的多いです。
- 21トリソミーでは胎盤限局性モザイクの頻度は小さいと言われています。
- 21トリソミーの赤ちゃんは、胎児超音波検査で構造学的な異常がわからないことがあります。
以上の観点から、NIPT陽性となり診断を希望される場合、当院では以下のようなマネージメントを提案しています。
13トリソミーや18トリソミーが陽性だった場合
- トリソミーを疑う構造学的な所見があれば、週数が適していれば絨毛検査も診断的検査として提案しています。
- 構造学的な所見が認められない場合は胎盤限局性モザイクの可能性を考慮して羊水検査を提案しています。
21トリソミー陽性だった場合
- 胎盤モザイクの頻度は比較的小さく、超音波検査で所見を認めないこともあるため、絨毛検査もしくは羊水検査を診断的検査の選択肢として提案しています。
当院では上記のような方針でNIPT陽性だった妊婦さんへの対応を行っています。
NIPT陽性を指摘され、羊水検査が実施可能な時期まで待つことなく、絨毛検査が選択肢となり得ることもあります。
当院では遺伝カウンセリングや超音波検査を通じて、ご相談させて頂いております。
お悩みの方は、どうぞ当院までご連絡ください。
新宿南口レディースクリニック 院長 市田 知之






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